映画で巡る世界の街
 Vol.88

ナポリ

所在地【イタリア共和国】

歴史と活気が交差する
港湾都市、ナポリ

 「ナポリを見てから死ね」という言葉は、文豪ゲーテが『イタリア紀行』に記したもの。そこには美しい港の景観や歴史遺産など、語りつくせないナポリの魅力が込められていました。旧市街では通りを横切る洗濯物が風に揺れ、石畳の路地にはピザを焼く香りが漂う。歴史や文化に彩られた佇まいと人々の自然な暮らしが、いまも明るく穏やかな気候の中で溶け合っています。
 ナポリの始まりは紀元前5世紀頃、古代ギリシャ人により築かれた植民市「ネアポリス(新しい都市)」にさかのぼります。中世にはナポリ王国の首都として地中海貿易で繁栄。その後、フランスやスペインの支配下では華麗な宮廷文化が花開きました。1861年にイタリア王国が誕生してからは地方都市の1つとなり、現在では南イタリア最大の港湾都市として世界中から多くの観光客を集めています。

アクセス

東京(羽田空港)からローマ(ローマ・フィウミチーノ空港)まで約14時間45分。ローマからナポリ・カポディキーノ空港までは約1時間。空港から市内中心部までは車で約20分。

ナポリでは、ピッツァにはワインではなく「ビール」を合わせるのが庶民の定番スタイル。

ナポリでは、ピッツァにはワインではなく「ビール」を合わせるのが庶民の定番スタイル。

イタリア南部に位置し、地中海のナポリ湾を望むイタリア第3の大都市(人口約100万)。「サンテルモ城」の展望台からのパノラマビューや、丘陵地帯の「ポジリポの丘」から望む絶景などが有名で、世界三大夜景の1つに称されている。写真中央遠景は、西暦79年の噴火でポンペイを火砕流で埋めたヴェスヴィオ火山。

イタリア南部に位置し、地中海のナポリ湾を望むイタリア第3の大都市(人口約100万)。「サンテルモ城」の展望台からのパノラマビューや、丘陵地帯の「ポジリポの丘」から望む絶景などが有名で、世界三大夜景の1つに称されている。写真中央遠景は、西暦79年の噴火でポンペイを火砕流で埋めたヴェスヴィオ火山。

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  世界遺産の旧市街を巡る

 ナポリは古くから多くの映画監督を魅了し、数々の名作の舞台となってきました。近年、ナポリの美しい街並みをあらためて世界に印象づけた作品が、パオロ・ソレンティーノ監督の『パルテノペ ナポリの宝石』(2025年・イタリア/フランス)です。ナポリで生まれ育った女性の半生を描く映画には、ヴェスヴィオ火山を望む海岸線や世界遺産の旧市街、迷路のような路地など、旅心を誘う風景が次々と登場します。

 例えば海沿いエリアの象徴的なロケ地は、主人公パルテノペの生家がある高級住宅街「ポジリポ地区」と、海岸沿いの散歩道「ルンゴマーレ」。一方、中心部では、世界遺産に登録されている「スパッカナポリ(旧市街)」の路地や、19世紀後半に建てられた美しいガラス張りのドーム天井を持つ巨大アーケード「ガレリア・ウンベルト1世」などが撮影に使われました。

 「ガレリア・ウンベルト1世」を抜けると、すぐ隣にはミラノのスカラ座より41年も前に建てられたヨーロッパ最古の歌劇場「サン・カルロ劇場」。その先には「ナポリ王宮」と「サン・フランチェスコ・ディ・パオラ聖堂」が並び、半日ほどで歴史ある街並みをゆったり巡ることができます。

 この界隈の散策中に立ち寄りたいのが、1860年創業のカフェ「グラン・カフェ・ガンブリヌス」。優雅な店内はまるで宮廷や19世紀のサロンのような雰囲気です。かつては、文豪ヘミングウェイやオーストリア王妃エリザベートといったヨーロッパ中の知識人やセレブも訪れました。エスプレッソと伝統菓子「ババ」を味わえば、大人のナポリ時間を楽しめます。また「ババ」をガラス瓶に密閉した「ババのラム酒漬け瓶詰め」も売っており、日持ちするのでお土産として人気です。

「スパッカナポリ」はナポリを東西に真っ直ぐ貫くメインストリート。その名物ともいえるのが、頭上にはためく洗濯物。

「スパッカナポリ」はナポリを東西に真っ直ぐ貫くメインストリート。その名物ともいえるのが、頭上にはためく洗濯物。


「ガレリア・ウンベルト1世」は美術館のような雰囲気のアーケード街。高級ブラント店やカフェが並ぶ。

「ガレリア・ウンベルト1世」は美術館のような雰囲気のアーケード街。高級ブラント店やカフェが並ぶ。


ショーケースに並べられた伝統菓子「ババ」。

ショーケースに並べられた伝統菓子「ババ」。


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  祈りの場所や食への悦び

 アクション映画でも、ナポリは舞台として登場します。『愛と銃弾』(2017年・イタリア)は、アクション・コメディをミュージカル仕立てにしたもの。マフィアのボスの葬儀が行われるのは「サンタ・マリア・デッラ・サニタ教会」でした。17世紀に建てられたバロック様式の美しい建築で、地下には初期キリスト教時代のカタコンベ(地下墓地)が広がっています。イタリア人ガイドによるカタコンベツアーも人気です。

 また、女性ジャーナリストが全てを捨てて自分探しの旅に出たヒューマンドラマ『食べて、祈って、恋をして』(2010年・アメリカ)もナポリはロケ地の1つ。ジュリア・ロバーツ演じる主人公が、美味しいものを食べる悦びを再発見する重要なシーンは、下町にある1870年創業の老舗ピッツェリア「アンティーカ・ピッツェリア・ダ・ミケーレ」で撮影されました。

 旅の締めくくりの夕食は、ナポリ中央駅近くにある1956年創業の老舗「ダ・ドナート」へ。地元で愛される名店では「ナポリ風ジェノベーゼ」や「タコのトマト煮込み」といった伝統料理が味わえます。グラスにイタリアワインを注ぎ、ジェノベーゼパスタやシーフードを味わえば、活気あふれる街の喧騒もいつしか心地よいBGMに。下町の活気あふれるナポリの夜を心ゆくまで満喫できます。


「カタコンベ」は教会の主祭壇前にある階段から地下に下りられる。

「カタコンベ」は教会の主祭壇前にある階段から地下に下りられる。


オリーブと白ワイン、ケッパーで味付けしトマトで煮込んだタコ料理。

オリーブと白ワイン、ケッパーで味付けしトマトで煮込んだタコ料理。



今月の橋

今月の橋

卵城の橋

ナポリ湾の小島に建つ「卵城(カステル・デッローヴォ)」へ渡る石橋(通称:卵城の橋)。長さ約100mで現在の石造りになったのは14世紀後半で、ナポリ民謡でおなじみの「サンタルチア」地区と小島につくられた要塞を結ぶ。11世紀にノルマン人がナポリを支配すると、要塞として機能を拡大した。ノルマン人がこの城を築くにあたって、基礎の中に卵を埋め込み、「卵が割れるとき、城はおろか、ナポリにまで危機が迫るだろう」と呪文をかけたことが城の名前の由来といわれている。