映画で巡る世界の街
 Vol.73

バンクーバー

所在地【カナダ】

自然に恵まれた
国際都市バンクーバー

 カナダ第3の都市、バンクーバー。アメリカに隣接するブリティッシュ・コロンビア州の南西部に位置するこの地には、3千年以上前から先住民族が暮らしていました。18世紀末にイギリスの探検家ジョージ・バンクーバーが訪れたのを始まりにヨーロッパの移民が増え、交易や林業で栄えていきます。その後、イギリスの植民地時代を経て、1861年にカナダが自治領となって以降は、鉄道の開通により一層の繁栄をもたらしました。

 現在、アジア系移民も多く暮らす国際色豊かな近代都市ですが、海と山に囲まれたバンクーバーの街には穏やかな心地良さがあり、幅広い層の観光客に親しまれています。

アクセス

東京(羽田・成田国際空港)からバンクーバー(バンクーバー国際空港)まで約8時間55分。空港から市内中心部まで車で約30分。

グランビル・アイランドのマーケットで売られている手づくりのハニーソープ。

グランビル・アイランドのマーケットで売られている手づくりのハニーソープ。

北米有数の国際都市で、バンクーバー市の人口は63万人(2023年)、バンクーバー都市圏では264万人(2023年)。

北米有数の国際都市で、バンクーバー市の人口は63万人(2023年)、バンクーバー都市圏では264万人(2023年)。コンパクトな街に都市機能と自然が調和し、イギリスの経済誌が発表する「世界で最も住みやすい都市」調査では毎年上位にランクインしている。写真手前の三つの砂浜はイングリッシュ・ベイに沈む夕陽を眺めるには最適なスポットといわれる「サンセット・ビーチ・パーク」。

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  観光スポットも集まるダウンタウン

 バンクーバーは、「ハリウッド・ノース」と呼ばれるほど映画産業が盛んで、いろいろな作品のロケ地に選ばれています。中でも地上最速男が活躍するアメリカの人気テレビドラマシリーズ『ザ・フラッシュ』(2014〜2023・アメリカ)と映画版『ザ・フラッシュ』(2023・アメリカ)では、中心部のダウンタウンで多くの撮影が行われました。

 例えばバンクーバーオリンピックの開会式が行われた「BCプレイス・スタジアム」は、ドラマ版で主人公が勤める施設の外観として使用されました。また1927年に建てられ荘厳な天井画が美しい「オルフェウム劇場」や、ローマのコロッセオをモチーフにした外観で知られる「バンクーバー中央図書館」も登場。図書館があるのはダウンタウンの目抜き通り「ロブソンストリート」なので、界隈には有名ショップだけでなくカフェも点在しており、ロケ地巡りの休憩に最適です。

 また、マーベル・コミックが原作の人体実験で不死の肉体を得た代わりに醜い身体になったヒーローを描く『デッドプール』(2016・アメリカ)と続編『デッドプール2』(2018・アメリカ)も、ニューヨークが舞台ですがロケ地はバンクーバーでした。『デッドプール』は、BCプレイス・スタジアム近くのハイウェイでの銃撃戦から始まり、ダウンタウンのバーやダンスホール、クライマックスのバトルは造船所跡地などが登場します。

カナダ人建築家モシェ・サフディが設計した「バンクーバー中央図書館」。1階のプロムナードにはカフェやギフトショップがある。

カナダ人建築家モシェ・サフディが設計した「バンクーバー中央図書館」。1階のプロムナードにはカフェやギフトショップがある。


ダウンタウンを東西につなぐ大通り「ロブソンストリート」。バンクーバー発祥の有名ブランドも軒を連ねる。

ダウンタウンを東西につなぐ大通り「ロブソンストリート」。バンクーバー発祥の有名ブランドも軒を連ねる。

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  古い街並みもロケ地

 トム・クルーズ主演の人気シリーズ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011・アメリカ)のラストシーンもバンクーバーで撮影されています。ミッション完了後に仲間と成功を祝う場面の設定はシアトルですが、実際はグランビル・アイランドでした。ここは海沿いのテラス席で夜風に吹かれながら祝杯をあげるシチュエーションが似合う、現地でも評判のスポット。ここにあるマーケットで販売されている「グランビル・アイランド・ソープ・ギャラリー」のハンドメイド石鹸は、お土産選びで定番のメープルシロップやアイスワイン以外を探している人におすすめです。

 また、60年代のアメリカで大流行した絵画の作者はその妻だったという実話をティム・バートン監督が映画化した『ビッグアイズ』(2014・アメリカ)では、「ガスタウン」がロケ地のひとつとして登場。レンガ敷きの舗道や19世紀の建物が並ぶこのエリアで特に有名なのは、15分毎に蒸気で笛が鳴る「蒸気時計」で、撮影する観光客でいつも賑わっています。

 そしてロケ地巡りの夕食は、港があるバンクーバーならではのシーフード料理が楽しめます。「カクタス・クラブ・カフェ」は1988年創業のレストランチェーンで市内に数店舗あり、イングリッシュ・ベイ店は海を見ながら食事ができると人気です。ソースが絶品と評判の「サーモンソテー」、白身フライと野菜が入った「フィッシュタコス」などのメニューは、オリジナルカクテルとの相性もぴったりです。


バンクーバー発祥の地と呼ばれ、レトロな街並みが残る「ガスタウン」。シンボルの蒸気時計は世界でここにしかない。

バンクーバー発祥の地と呼ばれ、レトロな街並みが残る「ガスタウン」。シンボルの蒸気時計は世界でここにしかない。


多国籍なバンクーバーの人々に親しまれている「フィッシュタコス」。

多国籍なバンクーバーの人々に親しまれている「フィッシュタコス」。


今月の橋

今月の橋

グランビル・ストリート橋

フォールス川を越え、バンクーバーのイェールタウンとグランビル・アイランドを結ぶ「グランビル・ストリート橋」。最初の橋は1889年に完成した長さ732mの低い木造の橋で、2番目の橋は1909年に完成したスチール橋だったが、放火テロと思われる火災が発生している。そして現在の橋は、1954年に開通した固定カンチレバー/トラス橋。8車線で全長は1,171m、高さは27.4m。橋上からはダウンタウンの景色が楽しめる。