映画で巡る世界の街
 Vol.83

クイーンズ区

所在地【アメリカ合衆国・ニューヨーク市】

多文化が混在する
クイーンズ区

 ニューヨーク市を構成する5つの行政区の中で、最大の広さ(東京23区の約半分)を誇るクイーンズ区(以下、クイーンズ)。17世紀にオランダ人が入植したことをきっかけに発展が始まり、1909年にマンハッタンと直結する「クイーンズボロ橋」が開通すると、街は急速に成長しました。その後、1939年と1964年の2度にわたって「ニューヨーク万国博覧会」の開催地となり、会場跡地は現在も「フラッシング・メドウズ・コロナパーク」として残されています。

 街の発展に伴い60年代後半からは移民が増加し、現在では100か国以上の人々が暮らすエリアに。「世界の縮図」とも称されるほど、多様な民族が共存しています。エリアごとに異なる街並みや多文化が共生するのもクイーンズの大きな魅力です。中でもかつては工業地区だった「ロング・アイランド・シティ」地区は、マンハッタンに近いといった利便性から高層のオフィスビルやマンションの建設が進み、今後の発展が期待される注目の街です。

アクセス

東京(羽田空港)からニューヨーク(ジョン・F・ケネディ国際空港)まで約13時間。空港からクイーンズ区中心部まで車で約30分。

東京(羽田空港)からニューヨーク(ジョン・F・ケネディ国際空港)まで約13時間。空港からクイーンズ区中心部まで車で約30分。

アストリア地区で行われるストリートフェア。4月から秋にかけて開催される。

マンハッタンの東、ロングアイランド西端に位置するクイーンズ。

マンハッタンの東、ロングアイランド西端に位置するクイーンズ。人口は約240万人(2020年時点)で、ニューヨーク市内ではブルックリンに次いで2番目に多い。ジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)やラガーディア空港を擁し、アクセスも良好。近年は再開発が進み、さらなる成長が期待されている。写真右奥の高層ビルはシティ・コープビルとも呼ばれている「ワン・コート・スクエア」。

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  ニューヨークらしい景観

 イーストリバー越しに望むマンハッタンの摩天楼をはじめ、クイーンズには絶景スポットが点在しています。そのため、ニューヨークを舞台にした映画のロケ地としてもたびたび登場します。中でも有名なのが、イーストリバーに架かる「クイーンズボロ橋」。ウディ・アレン監督の『マンハッタン』(1979)では、橋を背景にベンチに座る男女(アレンとダイアン・キートン)の後ろ姿が印象的に描かれ、ポスターにも使用されました。また、『スパイダーマン』(2002)では悪役ゴブリンと戦うクライマックスシーンに登場するなど、数々の名作映画のワンシーンを彩ってきました。

 さらに、人気観光スポットの「フラッシング・メドウズ・コロナパーク」も映画ファンにはおなじみの場所です。SF映画『メン・イン・ブラック』(1997)では、園内にある地球儀型モニュメント「ユニスフィア」が、クライマックスの舞台として印象的に映し出されました。広大なパーク内には全米オープンが行われる「USTAナショナル・テニス・センター」やニューヨーク市のパノラマ模型を展示する「クイーンズ美術館」、体験型科学館「ニューヨーク・ホール・オブ・サイエンス」、動物園などが点在します。また北側にはニューヨーク・メッツの本拠地「シティ・フィールド」があり、球場内の公式ストアはお土産探しにもおすすめです。

クイーンズのウオーターフロントからイーストリバー越しにマンハッタンを望む。

クイーンズのウオーターフロントからイーストリバー越しにマンハッタンを望む。


「フラッシング・メドウズ・コロナパーク」にある高さ約40mの「ユニスフィア」。1964年開催の万国博覧会のシンボル。

「フラッシング・メドウズ・コロナパーク」にある高さ約40mの「ユニスフィア」。1964年開催の万国博覧会のシンボル。


MLBニューヨーク・メッツのホーム球場「シティ・フィールド」。

MLBニューヨーク・メッツのホーム球場「シティ・フィールド」。

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  多国籍な街並みも魅力

 クイーンズを語るうえで欠かせないのが、多文化が色濃く表れる街並みです。中でも「ジャクソンハイツ」地区は象徴的なエリアで、167の言語が話されているといわれています。この地を舞台にした作品が、ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン監督による『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』(2015)。移民社会のリアルな姿を映し出し、多様な人々が力強く生きるエネルギッシュな姿が描かれています。

 活気あふれる繁華街には各国の飲食店が並び、食文化も実に多彩。特に南アジア系のスイーツ店が多く、インド菓子店「マハラジャスイーツ」は観光客にも人気です。インドの祝い事などで食べられる伝統菓子「ミタイ」は種類も豊富で、お土産にも喜ばれています。

 ロケ地巡りの締めくくりに立ち寄りたいのが、1940年代創業の老舗「コート・スクエア・ダイナー」。店内は映画に登場するようなクラシックなアメリカンダイナーの雰囲気が漂います。ボリューム満点のハンバーガーやサンドイッチ、ステーキ、パイなどを味わえば、まるで映画の登場人物になったような気分に。旅ならではのひとときを楽しめます。


クイーンズの北西部に位置する「ジャクソンハイツ」地区。世界各地の飲食店や商店、宗教施設が集まる賑やかなエリア。

クイーンズの北西部に位置する「ジャクソンハイツ」地区。世界各地の飲食店や商店、宗教施設が集まる賑やかなエリア。


インドの伝統菓子「ミタイ」。

インドの伝統菓子「ミタイ」。



今月の橋

今月の橋

エド・コッチ・クイーンズボロ橋

イーストリバーに架かる「エド・コッチ・クイーンズボロ橋」。クイーンズ区のロング・アイランド・シティ地区から、ルーズベルト島を通ってマンハッタンを結んでいる。クリーム色のトラスが美しい片持ち梁橋で、開通は1909年、全長1,135m。2010年12月、市は前市長エド・コッチに敬意を示して、橋の名を「クイーンズボロ橋」から、「エド・コッチ・クイーンズボロ橋」に改名することを発表した。橋の北側は、横に独立したルーズベルト島トラムウェイ(ロープウェイ)が走っていて映画『スパイダーマン』にも登場した。