映画で巡る世界の街
 Vol.79

フランクフルト

所在地【ドイツ連邦共和国】

ヨーロッパ有数の金融都市、
フランクフルト

 ドイツ中央西部に位置するヘッセン州最大の都市、フランクフルト。8世紀頃には東フランク帝国の首都となり、13世紀頃からメッセ(見本市)が開催されると商人が行き交う商業の街として繁栄します。こうした歴史的背景や交易の便の良さから、証券取引所や大手銀行の本店、欧州中央銀行の本拠地が置かれるようになりました。

 そして現在は、金融を軸に大都市へと発展。摩天楼がそびえる市内中心部は、ニューヨークのマンハッタンに似ていることからマイン川をもじって「マインハッタン」と呼ばれています。一方で、中心部には美しい歴史的建物が残っており、近代と中世が融合した街並みにはドイツの他の都市にはない独特の魅力があります。さらに、文豪ゲーテの生誕地でもあることから、フランクフルトには多くの観光客が訪れています。

アクセス

東京(成田空港)からフランクフルト(フランクフルト国際空港)まで約13〜15時間、空港から中心部まで車で約30分。

東京(成田空港)からフランクフルト(フランクフルト国際空港)まで約13〜15時間、空港から中心部まで車で約30分。

グリューワインが入ったマグカップ。

フランクフルトの正式名称は「フランクフルト・アム・マイン」で、人口は約76万人(2024年現在)。

フランクフルトの正式名称は「フランクフルト・アム・マイン」で、人口は約76万人(2024年現在)。金融都市として知られるが、世界最大規模の書籍見本市や音楽見本市、ミュージックメッセなどでも有名な商業都市でもある。

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  旧市街に残る木組みの家々

 海外作品のロケ地になることも多く、近年の作品では日本でもファンが多い韓国の恋愛コメディドラマ『涙の女王』(2024・韓国)があります。離婚の危機に直面した夫婦が愛を取り戻していく姿を描いた本作では、第6・7話で市内中心部のマイン川周辺が登場。例えば、恋人たちが永遠の愛を誓って南京錠をかけることで知られる「アイゼルナー橋(鉄の橋)」では、主人公夫婦が新婚旅行で橋にかけた鍵を探すシーンが撮影されました。

 マイン川に架かるこの橋のたもとに広がるアルトシュタット(旧市街)には、木組みの家が並ぶ「レーマー広場」、皇帝の戴冠式が行われていた「聖バルトロメウス大聖堂」、ゲーテの生家「ゲーテハウス」など、観光スポットが点在。特に賑わうのはクリスマスシーズンで、レーマー広場周辺で開かれる「クリスマスマーケット」は600年以上の歴史があり、世界中から毎年300万人以上の観光客が訪れます。お土産の一番人気はグリューワイン(シナモンなどのスパイスを入れたホットワイン)を飲む時に使うマグカップ。マグカップは返却するとカップ代が返金され、欲しければそのままもらえるデポジット制です。中でもクリスマスマーケット限定マグカップは、その年だけの特別デザインなので地元でも大人気です。

レーマー広場周辺の「クリスマスマーケット」では、華やかな屋根装飾の屋台が約200軒も立ち並ぶ。
レーマー広場周辺の「クリスマスマーケット」では、華やかな屋根装飾の屋台が約200軒も立ち並ぶ。

歴史的建造物に囲まれた「レーマー広場」は観光の中心地。3つ並んだ切妻屋根の中央の建物が「レーマー」と呼ばれる旧市庁舎。

歴史的建造物に囲まれた「レーマー広場」は観光の中心地。3つ並んだ切妻屋根の中央の建物が「レーマー」と呼ばれる旧市庁舎。


ゲーテの生家「ゲーテハウス」では、18世紀の典型的な中産階級の暮らしを知ることもできる。

ゲーテの生家「ゲーテハウス」では、18世紀の典型的な中産階級の暮らしを知ることもできる。


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  金融都市を象徴する摩天楼

 金融都市らしいフランクフルトの都市景観はロケ地としてよく使われ、SFコメディ映画『アイアン・スカイ』(2012・フィンランド/ドイツ/オーストラリア)もその1つ。第二次大戦の敗北後、月の裏側に潜んでいたナチスがUFOの大群を率いて地球を侵略するというスペースアクションの本作では、フランクフルトがニューヨークの金融街として撮影されました。

 また、フランクフルトのアメリカ領事館を舞台に元特殊部隊員の女性が行方不明の息子を探しながら陰謀と対峙するサスペンスアクション『エクステリトリアル』(2025・ドイツ)にも「マインハッタン」が登場。主要ロケ地はウィーンでしたが、高層ビル群の市内中心部、フランクフルト中央駅などが映し出されています。

 他にも、『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』(2015 ・ドイツ)は1950年代後半のフランクフルトが舞台。ナチスの最重要戦犯アドルフ・アイヒマンの逮捕に至るまでを検事フリッツ・バウアーを中心に描いた伝記映画で、50年代後半を再現した映像から摩天楼がそびえる以前の街の様子を知ることができます。

 ロケ地巡りを満喫した後の夕食は、レーマー広場近くにある「ツム・シュトルヒ・アム・ドーム」へ。ここはゲーテも常連だったという1704年創業の老舗レストランで、フランクフルトの郷土料理が評判の店。フランクフルト名物のソーセージ「フランクフルター・ヴルスト」や、ハーブをミックスした緑色のソース「グリューネゾーネ」を、特産のリンゴ酒「アップル ワイン」と一緒に堪能できます。


「フランクフルト中央駅」はヨーロッパ屈指の規模のターミナル駅。1日の乗降客数は約35万人。

「フランクフルト中央駅」はヨーロッパ屈指の規模のターミナル駅。1日の乗降客数は約35万人。


「フランクフルター・ヴルスト」は日本で「フランクフルト」として知られるソーセージの原型。豚肉100%で作られスモークされているのが特徴。

「フランクフルター・ヴルスト」は日本で「フランクフルト」として知られるソーセージの原型。豚肉100%で作られスモークされているのが特徴。



今月の橋

今月の橋

アイゼルナー橋(鉄の橋)

マイン川に架かる全長174mの歩道橋で、フランクフルトの中心部とザクセンハウゼン地区を結ぶ。最初の錬鉄製の橋は1868年に建設され、1911-1912年にカンチレバー橋に置き換えられた。第二次大戦で破壊されたため再建築され、復旧が完了したのは1993年。中央にはホメロスの『Odyssey(オデュッセイア)』からの一説が刻まれている。また近年は、恋人たちが永遠の愛を誓って橋の柱に鍵をかける「恋人たちの橋」としても有名。「聖バルトロメウス大聖堂」の美しい姿が中世の趣を感じさせる。