映画で巡る世界の街
 Vol.81

長崎市

所在地【長崎県】

異国情緒あふれる、
長崎市

 長崎県の県庁所在地である長崎市は、1570(元亀元)年の長崎港開港をきっかけに海外交易で栄え、江戸時代には中国やオランダとつながる唯一の窓口として独特の「和華蘭(わからん)文化」を育んできました。

 大変な戦禍にも見舞われましたが、いまの長崎市は「明治日本の産業革命遺産」(端島炭坑など)と「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(大浦天主堂など)という2つの世界遺産を有する人気の観光都市です。特に坂道の多い景観は大きな魅力で、歩くだけで歴史と異国情緒が感じられ、訪れる人を惹きつけています。

アクセス

東京(羽田空港)から長崎(長崎空港)まで約2時間。空港から市内までバスで約50分。

東京(羽田空港)から長崎(長崎空港)まで約2時間。空港から市内までバスで約50分。

長崎観光するなら市電がおすすめ。さまざまな映画にも登場。

人口約38万人(2025年11月1日現在)。第二次世界大戦の原爆で甚大な被害を受けたが、戦後は国際文化都市としての街づくりが進み、「平和公園」や「平和祈念像」などが整備され、平和発信の拠点として発展している。標高333mの稲佐山からの夜景は絶景で、2012年に夜景観光コンベンション・ビューローによりモナコ・上海とともに「世界新三大夜景」に選定された。

人口約38万人(2025年11月1日現在)。第二次世界大戦の原爆で甚大な被害を受けたが、戦後は国際文化都市としての街づくりが進み、「平和公園」や「平和祈念像」などが整備され、平和発信の拠点として発展している。標高333mの稲佐山からの夜景は絶景で、2012年に夜景観光コンベンション・ビューローによりモナコ・上海とともに「世界新三大夜景」に選定された。

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  歴史が息づく坂の街

 長崎市は映画の舞台としても数多く登場します。長崎市出身の歌手・さだまさしの小説を映画化した『解夏げげ』(2004)では、市内の名所が多数撮影に使われました。物語は、視力を失いつつある隆之(大沢たかお)が恋人の陽子(石田ゆり子)とともに、故郷・長崎で新しい生き方を探す人間ドラマ。隆之の視線を通して、長崎の風景が印象的に描かれています。

 寺院が建ち並ぶ寺町エリアでは、日本最初の唐寺とされる「興福寺」や、九州一の梵鐘で知られる「聖福寺」が重要な場面に登場します。さらに、外国人居留地の面影が残る「オランダ坂(活水坂)」、世界遺産「大浦天主堂」、長崎新地中華街など、観光客に人気のスポットでも撮影が行われ、長崎らしい風景が随所に映し出されています。

 大浦天主堂周辺には、日本最古の木造洋風建築「旧グラバー住宅」をはじめ明治期の洋館が集まる「グラバー園」があります。市内を一望できる眺望スポットとしてはもとより、石畳の一角にあるハートストーンも恋愛成就のパワースポットとして人気を集めています。

1620年創建の「興福寺」。中国・南京出身者が建てたことから「南京寺」とも呼ばれる。

1620年創建の「興福寺」。中国・南京出身者が建てたことから「南京寺」とも呼ばれる。


かつて外国人を「オランダさん」と呼んだことに由来し、彼らが通った坂道が「オランダ坂」と呼ばれるようになった。

かつて外国人を「オランダさん」と呼んだことに由来し、彼らが通った坂道が「オランダ坂」と呼ばれるようになった。


「グラバー園」内のハートストーン。

「グラバー園」内のハートストーン。

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  独特の工芸や食文化

 幼い頃に失踪した父を探す兄弟を描いた映画『こはく』(2019)でも、長崎市内が主要なロケ地となりました。亮太(井浦新)が営むガラス工場の撮影が行われたのは、グラバー通り沿いのガラス工房「瑠璃庵」。吹きガラス工芸「長崎びいどろ」は江戸時代にポルトガルから伝わった伝統工芸で、ペコンペコンと音が鳴る玩具「ぽっぺん」や酒器「ちろり」、藍色が美しいグラスなどが長崎土産として人気です。

 また、1915(大正4)年の開通以来、坂の多い長崎で市民の足として親しまれてきた路面電車も、亮太の通勤シーンで登場します。「長崎市役所」電停近くの「松翁軒本店」では、2階の喫茶店「セヴィリヤ」で焼きたてのカステラを味わえるため、ロケ地巡りの休憩にも最適です。

 さらに最近では、『夏の砂の上』(2025)も長崎を舞台にしています。幼い息子を亡くした喪失感から別居中の治(オダギリジョー)が、姪・優子(髙石あかり)と共同生活を送る中で小さな希望を見つけていく物語で、昭和レトロな飲食店が並ぶ「思案橋横丁」など、観光地とは異なる長崎の日常風景が捉えられています。

 長崎での夕食にぜひ味わいたいのが、江戸時代に生まれた「卓袱料理」。和・中・洋が融合した伝統料理で、円卓を囲み大皿の料理を取り分けながら楽しむのが特徴です。江戸時代から続く史跡料亭「花月」では、新鮮な魚の刺身や豚の角煮など原点に忠実な献立を、坂本龍馬ら歴史上の人物が訪れた庭園を眺めながら堪能できます。


長崎随一の繁華街「思案橋横丁」に位置する飲食店街。昭和レトロな雰囲気が残る。

長崎随一の繁華街「思案橋横丁」に位置する飲食店街。昭和レトロな雰囲気が残る。


「卓袱」とは中国風朱塗りの円形テーブルのこと。料理はお鰭という椀から始まり、小菜(冷たい料理)、中鉢(豚の角煮など)、大鉢(長崎天ぷらなど)で構成される。

「卓袱」とは中国風朱塗りの円形テーブルのこと。料理はお鰭という椀から始まり、小菜(冷たい料理)、中鉢(豚の角煮など)、大鉢(長崎天ぷらなど)で構成される。



今月の橋

今月の橋

眼鏡橋

中島川に架かる「眼鏡橋」は、1634(寛永11)年、興福寺の黙子如定(もくすにょじょう)禅師によって架けられたと伝わる。全長22m、幅3.65mで、現存最古級のアーチ型石橋。1960年に国の重要文化財に指定された。川面に映る影が双円を描き「メガネ」に見えることからこの名前がついたといわれ、東京の「日本橋」、山口の「錦帯橋」と並び日本三名橋に数えられる。