映画で巡る世界の街
 Vol.72

マニラ

所在地【フィリピン共和国】

スペイン情緒と人々の熱気が
交錯する都市、マニラ

 マニラ湾に面した港湾都市、フィリピンの首都・マニラ。フィリピンは大小7,641の島々からなり、最も大きいのがルソン島で、マニラはその南西部に位置します。16世紀後半にスペインの植民地になると首都機能を持つ街として整備され、19世紀後半にアメリカ領になった際も首都にふさわしい幹線道路の整備などが進められました。その後、第二次世界大戦を経た1946年、フィリピン共和国として独立を果たすと、晴れて国家の首都となります。

 21世紀に入り急成長を遂げたマニラは、東南アジア有数の大都市に発展。今、マニラを訪れると、近代的な高層ビル、スペイン植民地時代の美しい建物、そして、力強く生きる人々の熱気が融合した、独特のエキゾチックな街並みと出合うことができます。

アクセス

東京(羽田・成田国際空港)からマニラ(ニノイ・アキノ国際空港)まで飛行機で約4時間15分。空港から市内中心部まで車で約30分。

マニラ湾は人気の夕陽観賞スポット。

マニラ湾は人気の夕陽観賞スポット。

フィリピンの首都は、正式にはマニラ市をはじめとする17の行政地域からなるメトロ・マニラ(マニラ首都圏)。

フィリピンの首都は、正式にはマニラ市をはじめとする17の行政地域からなるメトロ・マニラ(マニラ首都圏)。人口は約1,348万人(2020年)。フィリピンの公用語はタガログ語だが、アメリカの植民地時代に英語が普及した影響で、英語が公用語として使われている。写真手前は植民地時代の建物が残る「イントラムロス」、左奥にはマンションやオフィスが入る高層ビル群が見える。

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  圧倒的な迫力のカーチェイス

 マニラの魅力は映画界でも注目度が高く、大作のロケ地にも選ばれています。例えば、世界的大ヒットとなったサスペンスアクション映画のボーン・シリーズ第4作『ボーン・レガシー』(2012・アメリカ)ではロケ地の1つとして登場。主人公の工作員クロス(ジェレミー・レナー)が命をつなぐ薬を求めて訪れたのがマニラでした。中でも主人公たちの命を狙う追走シーンは都会的な幹線道路だけでなく、古い建物の狭い路地や屋根を使い、スリリングで手に汗握る迫力。主人公がスタントを使わないアクションも話題になりました。

 そんな古い時代の建物が市内で多く残っているのは、「イントラムロス」と呼ばれるスペイン植民地時代に建てられた旧城壁都市。1571年から150年かけて建造された「サンティアゴ要塞」、バロック様式の石造りの教会「サン・アグスチン教会」などの観光スポットが集まっており、16世紀の面影を残す街並みを見ることができます。

 イントラムロスにもお土産店はありますが、市内各所にあるショッピングモールなら地元で親しまれているものが豊富にそろっています。中でもおすすめはスペインの伝統菓子がフィリピンで独自に進化した「ポルボロン」。マニラではフレーバーがバラエティに富んでいるのが特徴です。

自動車やバス、バイクだけでなく、パラソルの店舗や歩行者などが溢れるエキサイティングなマニラの幹線道路。

自動車やバス、バイクだけでなく、パラソルの店舗や歩行者などが溢れるエキサイティングなマニラの幹線道路。


四方を城壁で囲まれていた「イントラムロス」。現在は石畳の道にスペイン風の建物が並ぶ人気観光スポット。

四方を城壁で囲まれていた「イントラムロス」。現在は石畳の道にスペイン風の建物が並ぶ人気観光スポット。


1606年に完成した「サン・アグスチン教会」。イントラムロスで建設時のまま残っている唯一の建造物で世界遺産。

1606年に完成した「サン・アグスチン教会」。イントラムロスで建設時のまま残っている唯一の建造物で世界遺産。

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  夕食は世界三大夕景を眺めながら

 また、韓国史上最大規模の金融投資詐欺事件をモチーフにしたクライムアクション映画『MASTER/マスター』(2016・韓国)は、逃亡した悪徳投資会社社長チン(イ・ビョンホン)をエリート刑事キム(カン・ドンウォン)が追うストーリー。映画の後半はマニラが舞台になります。マニラでの撮影は1カ月にも及び、イントラムロスの「マニラ大聖堂」や市街地での迫力あるカーチェイス、銃撃戦の他、市民が利用するマーケットやスラム街など、そこに暮らす人々のリアルな姿も描かれています。

 マニラではアクション映画だけでなく、恋愛コメディも撮影されています。例えば『毎日あなたを愛してるEveryday I love you』(2015・フィリピン)は、マニラのテレビ局に勤める敏腕プロデューサーが地方に移動し、リポーターになるヒロインの女性に恋をする映画。女性監督ならではのていねいな演出で、マカティ地区にあるオフィスのスタイリッシュな日常と、のどかでやさしい地方の風景が、明るい日差しの下で映し出されます。

 ロケ地巡りが一息ついたら、世界三大夕景の1つ「マニラ湾のサンセット」を見に行きましょう。マニラ湾の桟橋上にある1985年創業の「ハーバービューレストラン」では、サンセットや夜景を眺めながら料理を堪能できます。シーフードレストランですが、肉や野菜を煮込んだ「アドボ」や牛肉と野菜のシチュー「カレカレ」など、マニラの郷土料理も評判。マニラ湾を一望できるロケーションでのディナータイムは、旅に出なければ味わえない至福の時間です。


「マカティショッピングモール」は、日用品からファッション、ブランド品、食料品、お土産まで多くの品物を幅広く取り揃えている。

「マカティショッピングモール」は、日用品からファッション、ブランド品、食料品、お土産まで多くの品物を幅広く取り揃えている。


マニラの代表的な家庭料理「アドボ」。原型はスペインの肉料理「アドバード」で、酢に漬けた肉を煮込むのが基本。

マニラの代表的な家庭料理「アドボ」。原型はスペインの肉料理「アドバード」で、酢に漬けた肉を煮込むのが基本。


今月の橋

今月の橋

ビノンド―イントラムロス橋

パシッグ川に架かる、ビノンド地区と旧市街イントラムロスを結ぶ「ビノンド―イントラムロス橋」。2022年完成、鋼製の弓弦アーチのデザインが施され全長は680メートル。4車線で渋滞緩和を目指して新設された。夜間のイルミネーションがきれいだと地元でも評判の観光名所になっている。